浅草公園
きらびやかな浅草の夜で父を見失った少年が、現実と幻のあわいをさまよううち、都市の不安そのものにのみこまれていく。
🏮 浅草の夜。人ごみ、店、光、でもどこか変。
少年
父ちゃん、待ってよ
🧒
🧥
父親
おい、あんまり寄り道するなよ
※と言いつつ父も店先に気を取られる。保護者、わりと自由。
🧸 玩具屋の前。綱をのぼる猿のおもちゃ。
少年
うわ、この猿ずっと動いてる。見てて飽きないやつだ
🧒
少年
……あれ、父ちゃん?
🧒
👥 人ごみの中、見失う。
少年
いた!たぶんあの背中!
🧒
少年
父ちゃん!
🧒
🎩
紳士
え、誰だい君
少年
……違った
🧒
※街は広い。希望はだいたい背中から外れる。
少年
今度こそ…?
🧒
🎭
仮面の男
……
少年
うわ、知らない人だし笑い方こわ
🧒
👓 めがね屋のショーウィンドウ。
🗿
人形の首
めがね買いなよ。父親探すなら見え方アップしないと
少年
いや、目は悪くないんだけど
🧒
※急に営業トークしてくる陳列物。浅草、守備範囲が広い。
🌺 造花屋の前。ガラスに自分の姿がぼんやり映る。
🌸
鬼百合
ほら、わたしきれいでしょ
少年
でも君、作りものじゃん
🧒
🚬 煙草屋。煙の向こうに城みたいな幻。
🚪
看板
この門に入る者は英雄になるべし
少年
今それより父ちゃん情報ほしい
🧒
🔫 射的屋。店番はいない。
少年
ちょっとだけなら…
🧒
少年
当たった!…いや一発だけか
🧒
少年
お金だけ減ったんだけど
🧒
※迷子中に遊技課金。判断力が夜に吸われている。
🎭 劇場の裏。高い窓に踊り子の影。
💃
踊り子
……
💐 花束が落ちてきて、手に取ると茨みたいになる。
少年
優しいのか痛いのか、どっちなんだよ
🧒
🌬️ 池のほとり。風が強い。
少年
帽子まで飛んだ!!もう勘弁して
🧒
☕ カフェの窓。家族っぽい光景が見える。
少年
みんなちゃんと一緒にいるのに
🧒
※ひとりの子には、他人のぬくさが妙にまぶしい。夜景、そういうとこある。
🧶 肌着屋の露店。猫とおばあさん。
👵
老婆
坊や、セーター買うかい?あったかいよ
少年
帽子さえ買えないよ……
🧒
🌌 空に父親らしい顔が浮かぶ。でもすぐ消える。
少年
いたと思ったのに、また消えた
🧒
📮 往来の角。広告、ポスト、急かす言葉。
📄
広告
急げ、急げ。いつ何があるかわからない
少年
急いでるよ。ずっと急いでる
🧒
🪑 公園のベンチ。やっと座りこむ。
少年
もう歩けない……
🧒
🧍
猫背の男
……
※隣で焼き芋を食べる人はいる。助け船は、今のところ来ない。現実はわりと冷たい。
⛩️ 観音堂の近く。祈る人たち。
少年
お願いしたら見つかるのかな
🧒
💧 手水鉢に、やつれた自分の顔が映る。
少年
僕、こんな顔してたっけ
🧒
🪨 石灯籠の下で、ついに泣く。
少年
父ちゃん……
🧒
🎭 背後に、あの仮面の男。父に似た顔へと揺らぐ。
※会いたい顔ほど、夜の中では別のものに化けやすい。心が疲れてると、なおさら。
👮 巡査が近づく。
👮
巡査
どうした、迷ったのか
少年
……うん
🧒
👮
巡査
よし、一緒に行こう
🏮 また大提灯が高く上がり、雑踏を見下ろす。
- ▶迷子の不安は街の幻を呼ぶ
- ▶にぎやかな場所ほど孤独は深まる
- ▶子どもの目には都市そのものが怪談になる
芥川竜之介『浅草公園』のあらすじ
浅草の仲見世を歩いていた少年は、玩具屋の前で足を止めたすきに父親を見失ってしまう。人ごみの中で似た背中を追い、店先の人形や看板、飾り窓の幻に翻弄されながら、少年はひとり夜の公園をさまよい続ける。華やかな浅草の景色は、迷子になった少年の不安を映すように、次々と奇妙で不気味な像へ変わっていく。やがて疲れ果てて泣き出した少年に、最後は巡査が手を差し伸べる。
『浅草公園』の作者について
芥川龍之介(1892-1927)は大正期を代表する作家で、『羅生門』『鼻』『河童』などで知られる。鋭い知性と感覚的な描写をあわせ持ち、晩年には不安や幻覚、都市の異様さを色濃く映した作品を多く残した。『浅草公園』は「或シナリオ」という副題の通り、映画の場面割りのような手法で、近代都市のまばゆさと不穏さを実験的に描いた作品である。
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