Monogatalk

芥川竜之介

病と恋と思想に揺れる旧友を見つめながら、友情のやさしさと残酷さがじわじわ浮かび上がる。
🕯️ 昔の友だちを思い出す夜
あいつのこと、急に思い出した。印刷屋の二階で、床ごとガタガタ揺れる部屋に住んでたんだよな。
🧑
🧒
今日もトランプで運試ししてる。人生、だいたい手札が渋い。
※部屋は揺れるし本人は細いし、見てるだけで不安定感がすごい。
🏘️ 昔、妹をたずねに行く
🧒
僕、妹の行き先を聞いたんだ。一緒に会いに行かない?
行く。そういうの、一人で行くと心が折れるやつだし。
🧑
👩
あら、兄さん? どうも。お茶どうぞ。
🧒
えっと…結婚したの、いつ? 子どもは何歳? 兄さんはどんな人?
👩
まあ、そんな感じです。兄さんは本読むのが好きですよ。
※会話は続いてるのに、心だけずっとすれ違っている。気まずさが番茶より渋い。
帰り道、なんか静かだったな。
🧑
🧒
こうして歩いてると、垣根に触れた指が震えるんだ。電気でも流れてくるみたいに。
※言葉にできないさびしさを、指先だけが受信していた。
📚 進路と思想がややこしくなる時期
あいつ、受験に落ちてから急に難しい本ばっか読むようになった。
🧑
🧒
社会の仕組みを知らずに詩だけ読んでてもダメでしょ。
うっ、推しの詩人まで全否定するのやめて。
🧑
🧑‍⚕️
K
お前ら、そんな熱い議論してるなら外で遊べば?
🧒
いや、今はそういう気分じゃない。
※誘惑をスルーする姿だけは妙に堂々としている。中身はまだ少年っぽいのに。
その後、彼は遠くの学校に入って、手紙だけは元気そうだった。読んだ本の報告、やたら長いやつ。
🧑
🛏️ 病気で帰ってくる
でも、ほどなく病気で戻ってきた。見舞いに行くたび、元気そうに話すのが逆につらかった。
🧑
🧒
この体じゃ、もう大きいことは何もできそうにないな。
そんなこと言うなよ。
🧑
🧒
それよりさ、いとこの美代ちゃんのことなんだけど。日記をちょっと見ちゃって。
ちょっと、で済ませる顔じゃないな。
🧑
🧒
知らない学生のことが書いてあった。忠告したほうがいいかな。
いや、それは変じゃない? 自分は好きで、相手は好きになっちゃダメって。
🧑
※正論はときどき刃物より冷たい。しかも相手は病人である。空気、完全に終了。
🧒
……じゃあ今度、本を貸してよ。元気の出るやつ。
わかった。勢いのある長編、持ってくる。
🧑
🌴 療養先の海辺
冬休みに海辺の病院まで会いに行った。部屋は寒いし、風は入るし、やさしくない建物だった。
🧑
🧒
あの木、なんか放っておけないんだよ。葉っぱがずっと神経質に揺れてて。
わかるけど、海辺の木までしんみりし始めたら会話が重いって。
🧑
🧒
君の冗談、たまに雑だよね。
貸した本、読んだ?
🧑
🧒
少しだけ。元気すぎて、今の僕にはまぶしかった。
🌊 夕方の海を散歩
🧒
この砂、表面は冷たいけど、少し掘るとまだ昼の熱が残ってる。
ほんとだ。なんか不思議で、ちょっとこわいな。
🧑
🧒
でも、その熱もすぐ消えるよ。
※こういう何でもない一言が、あとから妙に残る。人生、伏線だけは静かに置いていく。
📮 訃報が届く
翌年の正月、黒いふちのはがきが来た。彼はもういなかった。
🧑
貸した本も、彼の持ち物と一緒に焼かれたらしい。なぜか、そのことがやけに胸に残った。
🧑
🧑‍⚕️
K
彼が死んで、君は少し勝った気分にならない?
……は?
🧑
🧑‍⚕️
K
僕は、少しそう感じるね。
※人の死の前で、友情も嫉妬も観察癖も全部むき出しになる。大人って面倒である。
  • 若さは純粋さと残酷さを一緒に持つ
  • 友情の中にも嫉妬や距離がある
  • 思い出は死後に輪郭を強くする

芥川竜之介『彼』のあらすじ

語り手の「僕」は、かつて親しかった旧友「彼」を回想する。少年時代、妹を訪ねていったときの気まずい再会や、受験に失敗した後に思想書へ傾いていく姿、病に倒れてからの恋や孤独が断片的に語られる。海辺の療養先で交わした静かな会話は、彼の衰えと内面の繊細さをいっそう際立たせる。やがて届いた訃報をきっかけに、「僕」は友人の死をめぐる自分たちの複雑な感情と向き合うことになる。

』の作者について

芥川龍之介(1892-1927)は、大正期を代表する作家で、『羅生門』『鼻』『河童』などで知られる。鋭い観察眼と知的な文体を持ち、人間の心理の揺れや近代人の不安を繊細に描いた。『彼』は晩年に近い時期の作品で、青春の記憶、病、友情、嫉妬といった感情が回想形式の中で静かに重なり合う一編である。

青空文庫で原文を読む →

このサイトのコンテンツは AI により生成されています。作品理解の「入り口」としてお楽しみください。