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彼 第二

芥川竜之介

どこにも居場所を定めきれない友人の魅力と孤独が、回想と夢のあわいでいつまでも揺れ続ける。
🔥 暖炉のある部屋。初対面なのに既視感MAX
なんかこの光景、前にも見た気がするんだが…夢で会った?
🧑
🧥
I detest Bernard Shaw.
※初対面の会話がいきなり強火すぎる
カフェ。蓄音機がずっと鳴ってる
🧥
あの音楽止めたい。誰かが5銭入れるたび、僕が10銭払うからやめてって言ってくれない?
発想が金持ちの迷惑客なんよ
🧑
🧥
聞きたくない音を金で流されるのも、だいぶ迷惑だけどね
💿 ちょうど音が止まる
🎓
学生
よし、もう一曲いこ
🧥
おい待て
※止まった瞬間に再生する男、空気クラッシャーの才能あり
外出よう。今の君、イス投げそうだった
🧑
❄️ 粉雪の夜。傘なしで歩く
こういう雪の夜って、どこまでも歩きたくならない?
🧑
🧥
なるなら歩けよ。思うだけで歩かないの、だいぶ弱いぞ
急に言い方つよいな
🧑
🧥
昨日、本国の政府に電報打った。戦争に行きたいって
マジで?
🧑
🧥
まだ返事はない
🪟 本屋のショーウィンドー。戦争の本が並ぶ
🧥
高みから戦争を語る人にはわからないよ。こっちはその真ん中にいるんだ
※若さと怒り、だいたいセット販売
今日は帰るわ
🧑
🧥
そうか。…でもこの景色、ほんと日本っぽいね
🏠 数年後。日本の下宿で再会
🧥
日本もどんどんアメリカっぽくなるね。いっそフランスに住もうかな
外国に憧れて来た人、だいたい一回はがっかりするよね
🧑
🧥
いや、がっかりじゃない。最初から夢なんて持ってないし
それ言い切る人ほど、実は夢あるんだよな
🧑
🧥
近いうち上海で新聞の通信員になるかも
東京よりは面白そうじゃん
🧑
🧥
その前にこれ見て。指輪
💍 内側に『桃子へ』
お、ちゃんと贈り物してる
🧑
🧥
本当はその下に僕の名前も入れるはずだったんだけどね
※笑い話みたいに言うのが、逆にしんどい
最近どのへん行ってるの?
🧑
🧥
柳橋。水の音が聞こえるから好きなんだ
🧥
あと日本の小説、相変わらず読んでる。今日は飯つき合える?
もちろん
🧑
🧥
僕、正座はもうできる。でもズボンにはやさしくないね
※異文化適応、成功と布の犠牲は両立する
🍸 さらに後。上海のカフェ
あの派手にしゃべってるきれいな人、誰?
🧑
🧥
フランスの女優っぽい人。まあ、それより隣の老人見てよ
🧥
あの人、ずっと上海に住んでて満足そうなんだ。僕はもうこの街に飽きた
街に? それとも、どこにいても落ち着かないだけ?
🧑
🧥
今住んでみたいのは、ソ連のロシアくらいかな
行けるなら行けばいいのに
🧑
🧥
世の中つらいし住みにくい。でも、鳥じゃないから飛んで逃げるわけにもいかないんだよね
※急に古い歌を口ずさむ。こういうとこがずるくて刺さる
要するにお前、さまよいがちな人ってこと?
🧑
🧥
そんな単純じゃない。詩人、画家、批評家、新聞記者、息子、兄、独身、アイルランド人、ロマン主義者、現実主義者、政治的には共産主義者…属性が多いんだよ
あと恋人、でしょ
🧑
🧥
それもある。さらに無神論者、物質主義者…忙しいだろ、僕
🌫️ 夜の川沿いを歩く
🧥
そういえば僕、声を調べてもらったら世界級のバリトンらしい
急に才能の追加情報くるじゃん
🧑
🧥
新聞記者じゃなく歌手やってたら、かなり行けたと思う
それは人生の損だな
🧑
🧥
いや、損したのは僕じゃない。世界のほう
※自己評価がでかい。だが少しも嫌いになれない
🐕 川に白い子犬の死骸。首には花の輪
きれいだけど、つらい光景だな
🧑
🧥
あの女優か、もしくは僕の中の声楽家だね
🧥
……っくしゅん!
🌙 後日。僕は夢でまた彼に会う
🧥
I detest Bernard Shaw.
やっぱりこの場面、最初から夢みたいだったんだな…
🧑
※目が覚めても、夢の続きみたいな夜はある
  • 人は一つの肩書きでは足りない
  • 若さの熱と寂しさは同居する
  • 記憶は友情を何度も呼び戻す

芥川竜之介『彼 第二』のあらすじ

語り手の「僕」は、若いアイルランド人の友人「彼」と出会い、強い既視感を覚える。二人は東京のカフェや雪の夜の街を歩きながら、文学、戦争、国への思いを語り合う。数年後に再会した彼は、日本や上海を転々としつつ恋や仕事や思想の間で揺れ、どこにも完全にはなじまない寂しさをのぞかせる。やがて別れののち、僕のもとには夢の中でふたたび彼の姿と言葉がよみがえり、失われた友情の感触だけが残る。

彼 第二』の作者について

芥川龍之介(1892-1927)は大正期を代表する小説家で、『羅生門』『鼻』『河童』などで知られる。鋭い知性と繊細な感覚をあわせ持ち、晩年には自伝的な気配を帯びた作品や、記憶・不安・死の影をにじませる文章を多く残した。『彼 第二』もその一つで、異国的な友人像を通して、時代の空気と個人の孤独を静かに映し出している。

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