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おしの

芥川竜之介

病気の息子を救いたい母と異国の神父が向き合ううち、信仰より深い誇りと価値観の衝突がむき出しになる。
雨の日の薄暗い寺院
※しん…としている。こういう静けさ、だいたい何か起きる前ぶれ。
神父
……祈り中です
👘 武家の女が入ってくる
しの
すみません、お願いがあって来ました
👘
神父
何でしょう
しの
私は一番ヶ瀬半兵衛の妻でした。息子の新之丞が重い病気なんです
👘
しの
せきも熱もひどくて、薬も医者も試したけど全然よくならなくて
👘
しの
あなたの治療はすごく効くと聞きました。一度、見ていただけませんか
👘
※切実なお願いなのに声が静かすぎる。逆に圧がある。
神父
いいでしょう。診に行きます
しの
本当ですか。それはありがたいです
👘
神父
安心なさい。できる限りのことはします
しの
ありがとうございます。あとは清水寺の観音さまにもおすがりするつもりです
👘
神父
……今なんと?
神父
木や石の像に祈ってはいけません。まことの神はただ一人です
神父
息子さんを助けるのも救うのも、その神だけです
しの
はあ……
👘
※急に宗教プレゼンが始まった。しかもかなり熱い。
神父
ご覧なさい。あの十字架の人こそ救い主です
🪟 窓の絵に十字架の姿が浮かぶ
しの
あれが南蛮の仏さまみたいな方ですか
👘
しの
息子が助かるなら、お仕えするのもかまいません
👘
神父
ではよくお聞きなさい。この方は人々を救うために苦しみを受け――
📖 神父、熱弁モードへ
神父
生まれた時から奇跡を行い、最後には十字架にかけられました
神父
その時こう叫ばれたのです。『わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか』と
しの
……え?
👘
❄️ 空気が急に冷える
しの
その方、見捨てられたと嘆いたのですか
👘
神父
それは深い意味のある――
しの
私の夫は、敵の前で一度も背を向けませんでした
👘
しの
馬も鎧もなくても、紙の羽織で戦に出て、大勢を相手に切り込んだ人です
👘
しの
そんな夫に比べて、苦しい時に嘆く神さまでは頼りなく見えます
👘
※神父の必殺プレゼン、まさかの価値観バトルで返された。
神父
……
しの
そんな臆病に見える方の薬を、息子に飲ませる気にはなれません
👘
しの
知っていれば、ここまで来ませんでした
👘
🚪 しの、きっぱり立ち去る
※助けを求めに来たはずが、最後は信念の一本勝ち。神父、完全に言葉を失う。
  • 信仰は説明だけでは届かない
  • 価値観の違いは善意でも埋まらない
  • 母の強さは静かで鋭い

芥川竜之介『おしの』のあらすじ

雨の日の南蛮寺に、武家の未亡人しのが現れ、病気の息子・新之丞を診てほしいと神父に頼む。神父は快く引き受けるが、しのが観音にも祈るつもりだと知ると、唯一の神を信じるよう強く説き始める。さらにキリストの受難を熱心に語るうち、十字架の上での嘆きの言葉がしのの反感を呼び起こす。亡き夫の武勇を誇るしのは、その神を弱いものと見なし、治療を断って寺を去っていく。

おしの』の作者について

芥川龍之介(1892-1927)は、大正期を代表する小説家で、『羅生門』『鼻』『地獄変』などで知られる。古典や説話、異文化との接触を題材に、人間の心理や価値観のずれを鋭く描いた。『おしの』もキリスト教と武士道的な価値観の衝突を通して、単純には交わらない人間の信念を浮かび上がらせる作品である。

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