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或恋愛小説

芥川竜之介

愛していたのは誰なのか――恋の高揚と現実のズレを、痛烈なユーモアでひっくり返す一作。
🏢 婦人雑誌社の応接室
🧔
主筆
堀川さん、うちに恋愛小説くださいよ。読者、もう普通の恋バナじゃ満足しないんです
堀川保吉
いいですよ。ちょうど一本、書きたいのがあるんです
🪶
🧔
主筆
助かる!広告も打ちますよ。「涙が止まらない恋愛超大作」みたいな感じで
堀川保吉
いや題名は「恋愛は最強」です
🪶
※編集者、すでに売れる匂いをかいでいる
🧔
主筆
いいですねえ。今どきっぽい三角関係とか入ってます?
堀川保吉
入ってます。若い奥さん、やさしい夫、そして天才音楽家です
🪶
🧔
主筆
もう読者が好きなやつ
堀川保吉
舞台は山の手の家。西洋風の部屋があって、ピアノがあって、夫婦は仲良しです
🪶
🧔
主筆
強い。絵になる
堀川保吉
そこへ達雄って音楽家が出入りする。貧乏だけど才能は本物。顔はちょいゴツい
🪶
🧔
主筆
天才でちょい荒っぽい見た目…はい人気
堀川保吉
奥さんの妙子は気づくんです。あ、この人たぶん私を好きだって
🪶
🧔
主筆
来た来た来た
🎹 ある冬の夜、ピアノが鳴る
堀川保吉
達雄が情熱的な曲を弾くんです。妙子、もう気持ちが揺れる。あと一歩で大変なことになる
🪶
🧔
主筆
で、そこで夫が帰宅!?
堀川保吉
そう。ギリでセーフ
🪶
※恋愛小説、だいたい帰宅タイミングが神がかっている
堀川保吉
その後、妙子は苦しくなって、夫に「達雄に好かれてます」とだけ打ち明けます
🪶
🧔
主筆
自分も惹かれてるとは言わないのか
堀川保吉
そこは言わない。夫は静かに達雄の訪問を断るんです
🪶
🧔
主筆
おお…静かな修羅場
堀川保吉
さらに夫が中国の漢口へ転勤。妙子は一緒に行く前に達雄へ手紙を出します。「お互いあきらめましょう」って
🪶
🧔
主筆
切ない。これは売れる
📨 一年後
堀川保吉
でも妙子、向こうでも達雄を忘れられない。ついに「やっぱり愛してました」と手紙を出すんです
🪶
🧔
主筆
うわ、ついに本音
🧔
主筆
で、達雄が全部投げ出して会いに行くんでしょ?
堀川保吉
いや、そんなお金ないです。達雄、映画館でピアノ弾いて食いつないでるので
🪶
🧔
主筆
急に現実が重い
雨の夜、場末のカフェ
堀川保吉
達雄はそこで手紙を読む。昔の西洋間やピアノを思い出す
🪶
🧔
主筆
はい名場面。ここで泣く
堀川保吉
いや、そのあと達雄、笑い出して「なんだそれ」ってなるんです
🪶
🧔
主筆
えっ
堀川保吉
そもそも達雄、妙子を愛してなかったんですよ
🪶
🧔
主筆
は???
堀川保吉
あの家のピアノを弾きたくて通ってただけです。要するに恋じゃなくて楽器目当て
🪶
※三角関係だと思ったら、片方の矢印がピアノに刺さっていた
🧔
主筆
ちょっと待って、読者の感情どうするんですか
堀川保吉
さらに言うと、その後の達雄は震災で仕事を失って、今は巡査です
🪶
🧔
主筆
情報量が急に多い
堀川保吉
巡回中にどこかからピアノの音がすると、家の外で立ち止まって昔を思う。それが彼の小さな幸せです
🪶
🧔
主筆
しみるけど、恋愛小説としてはだいぶ斜め上だな…
堀川保吉
一方の妙子は、転勤先を移りながらずっと達雄を思い続ける。子どもも増えて、夫は酒量も増える。でも本人は「本当に愛したのはあの人」って信じてる
🪶
🧔
主筆
それ、幸せなの…?
堀川保吉
本人がそう思えてるなら、かなり強い幸福ですよ。恋愛って最強でしょう?
🪶
※現実はぬかるみ、思い込みは高性能ブーツ
🧔
主筆
堀川さん、真面目に言ってます?
堀川保吉
大真面目です。世の恋愛小説って、恋を盛りすぎるでしょ。だから失恋した人まで、変に自分をドラマ化しちゃうんです
🪶
🧔
主筆
耳が痛い業界批判きた
堀川保吉
でもこの話なら、そんな大げさな悲劇に酔わずに済む。しかも最後はちゃんと幸福の話です
🪶
🧔
主筆
いやー…うちではちょっと載せられないですね
堀川保吉
了解です。他で出します。広い世の中、わかってくれる雑誌もあるでしょ
🪶
※そして本当に載る。作中で営業に負けず、現実でも勝つタイプ
  • 恋は事実より思い込みで育つことがある
  • 人は自分の物語を信じて生きる
  • 恋愛小説そのものへの皮肉

芥川竜之介『或恋愛小説』のあらすじ

婦人雑誌の主筆に恋愛小説の執筆を頼まれた堀川保吉は、若い人妻・妙子と夫、そして天才音楽家・達雄の三角関係の筋を語りはじめる。妙子は達雄への思いに揺れ、夫との生活を続けながらも、遠く離れた土地でなお彼を忘れられない。ところが物語は、主筆の期待する甘く悲しい恋愛小説の形から、思いがけない方向へずれていく。会話が進むほど、恋愛そのものだけでなく、恋愛小説を信じる人々の心理まであぶり出されていく。

或恋愛小説』の作者について

芥川龍之介(1892-1927)は、大正期を代表する小説家で、『羅生門』『鼻』『地獄変』などで知られる。古典題材の再構成に加え、都市生活や知識人の感覚を鋭い皮肉で描いた作品も多い。『或恋愛小説』は、当時広く読まれていた通俗的な恋愛小説の型を逆手に取り、恋愛観そのものを批評するように書かれた会話体の作品である。

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