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海のほとり

芥川竜之介

夏の終わりの海辺で、若さの浮つきと将来への不安が静かににじみ出る一篇。
🌧️ 海辺の宿。雨、まだ続いてる
昼ごはん食べたし、そろそろ原稿やるか…って気分だけはある
🧑
👓
言うだけなら自由。まず寝たままメガネ拭くわ
※締切前の文学青年、だいたい姿勢が終わっている
八犬伝でも読むか。現実逃避としてはわりと優秀
🧑
でも原稿料うっす…これで今後どう食うんだろ
🧑
💤 うとうと
🌊
謎の声
もしもし、お願いがあるんですが…
誰? またお金の相談? それ今ちょい重い
🧑
🌊
謎の声
いや、お金じゃなくて。会わせたい人が…
🌙 戸を開けると、庭が池みたいになってる夢
誰もいないんだけど!?
🧑
🐟 波が近づいて、鮒みたいになる
あ、今しゃべってたの魚か。納得していいのかわからんけど納得
🧑
※夢の説明としては雑だが、本人だけは妙に腑に落ちている
🏖️ 1時間後、海へ
👓
泳げるかな。寒そうだけど来たからには入りたい
この気温で海はちょっと修行なんよ
🧑
🌊 浜はもう人が少ない。夏の終わり感が強い
👓
せっかくだし入るわ。君も来いよ
いや、僕は見学で
🧑
👓
あの“嫣然くん”がいたら即インするくせに
言い方よ。しかもそれを今ここで言う?
🧑
※“嫣然くん”=前に浜でさわやかに笑った中学生への、勝手すぎるあだ名
🏃 M、ひとりでざぶざぶ入水
🚬 僕は砂山でたばこを吸おうとする
👓
ダメだ、水母にやられた。首のまわりピリピリする
ほら見ろ。だから僕は陸に魂を置いたんだ
🧑
👓
海水浴、もう店じまい感あるな
👓
で、教師の口は決まりそう?
まだ。将来が波より不安定
🧑
👭 そこへ派手な水着の少女ふたり登場
👓
お、まだ帰ってなかったんだ
片方だけなら応援するけど、“ジンゲジ”も一緒か…
🧑
※あだ名の付け方が雑で失礼。だが文学青年はたまにこういうところがある
👓
そこは人類愛で入ってこいよ
いや、見られてるの完全にわかってる感じがして、なんか負けた気がする
🧑
🌊👒 少女たちは笑いながら沖へ。浜だけ妙に華やぐ
きれいではある。人というより、夏そのものって感じ
🧑
👓
でも見てると、ちょっと危なっかしいな
🚶 結局ふたりは宿へ戻る
🌆 夜の浜へ、友人Hと宿の若主人Nさんも合流
🧔
Nさん
私はちょっと用事のついでに。みんなで浜歩きも悪くないですね
この草なんて名前だろ。海辺の草、全部“海辺の草”で処理してた
🧑
🧔
Nさん
さあ…Hさんなら詳しいでしょう。土地の人ですし
🪵
まあね。魚も潮も、だいたいはわかる
🧔
Nさん
この前も、魚に刺された人が“いや海蛇だ”って言い張って大変でしてね
海蛇ってほんとにいるの? その情報、夜に聞きたくなかった
🧑
🪵
いるにはいる。でも、めったに出ないさ
※“めったに出ない”は安心材料の顔をした不安材料
🧺 ながらみ取りの男たちとすれ違う
ああいう仕事、きついだろうな…。明日の自分を見てる気までしてくる
🧑
🪵
流れに持っていかれたら危ないしね。海は静かでも油断できない
🧔
Nさん
そういえば昔、このへんで“ながらみ取りの幽霊”が出るって騒ぎがありましたよ
👓
え、急に怪談モード?
🧔
Nさん
実は幽霊じゃなくて、亡くなった人の墓の前に毎晩立ってた女の人だったんです
笑い話みたいで、全然笑えないやつだな
🧑
🌌 風の落ちた渚。海だけが黒い
👓
さて、このへんで戻るか
👣 HとNさんに別れ、僕とMだけで引き返す
なあ、もう東京へ戻ろうか
🧑
👓
うん、戻るのも悪くない
※夏は終わりかけ、原稿は進まず、将来は見えず。でも海だけはやけにきれいだった
🎵 M、軽く口笛。僕らはそのまま歩いて帰る
  • 夏の終わりの気配
  • 若さの不安と気だるさ
  • 海辺に漂うさみしさ

芥川竜之介『海のほとり』のあらすじ

海辺の宿に滞在する「僕」と友人のMは、雨の日の午後をだらだらと過ごし、仕事や将来のことをぼんやり考えている。夢とも現実ともつかない感覚を引きずったまま海へ出ると、そこには夏の終わりの寂しさと、まだ消えきらない若い生命のきらめきが同居していた。浜では見知らぬ少年や少女たち、土地の友人や宿の若主人とのやりとりが続き、何気ない会話の中に不安や孤独が顔をのぞかせる。やがて夜の渚を歩きながら、僕とMは東京へ戻ることを思いはじめる。

海のほとり』の作者について

芥川龍之介(1892-1927)は大正期を代表する小説家で、『羅生門』『鼻』『河童』などで知られる。初期の技巧的な短編だけでなく、晩年には心の揺らぎや不安、感覚の繊細な陰影を描く作品を多く残した。『海のほとり』はそうした後期の気分がよく表れた一作で、事件よりも空気や会話、季節の移ろいの中に若者たちの心象がにじむ。

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