運
「運がほしい」という素朴な願いが、思いがけない代償や皮肉を連れてくる――そんな人間の欲と不安をじわりと突く一編。
🏺 春の午後、清水へ向かう道がにぎやか
青侍
今日も参拝客えぐいな。観音さま、人気すぎでは?
🧑
👴
陶器師の翁
左様でございます。よう流行っております。
青侍
こっちは全然うまく行かんのよ。いっそ毎日お参りして、運だけでも課金したい。
🧑
※信心というより、だいぶ即効性を求めている。
👴
陶器師の翁
それは信心でなく商売気でございますな。
青侍
バレた? で、観音さまってマジで運くれるの?
🧑
👴
陶器師の翁
運は授けることもございましょうが、それが良い運かどうかは別で。
青侍
何それ、運ガチャに注意書きあるタイプ?
🧑
※SSRっぽく見えて副作用つき、たまにある。
青侍
気になる。続きちょうだい。
🧑
🌙 翁、昔話モードに入る
👴
陶器師の翁
昔、清水で『一生らくに暮らせますように』と願をかけた娘がおりました。
青侍
切実。もうその時点で応援したい。
🧑
👴
陶器師の翁
母を亡くし、暮らしもぎりぎり。けれど顔立ちも気立てもよい、しっかり者でしてな。
青侍
お、話が急に前のめりになってきた。
🧑
👴
陶器師の翁
満願の夜、その娘は夢で『帰り道で声をかける男の言うことを聞け』と告げられたのでございます。
青侍
え、急に不穏。お告げ、説明不足すぎん?
🧑
※天のメッセージ、たまに雑。
👴
陶器師の翁
で、寺を出た帰り道、ほんとうに男が現れて、娘を連れて行ったのでございます。
青侍
展開が速いし怖い!
🧑
👴
陶器師の翁
娘は夢のお告げと思いこみ、その男と夫婦になる話を受けました。すると男は、絹や高価な布をどさっと渡したのです。
青侍
え、急に景気がいい。怪しさは満点だけど。
🧑
💰 塔の奥にはさらに財宝がごろごろ
👴
陶器師の翁
塔の奥には金目のものが山ほど。娘は『これはまずい相手だ』と気づきました。
青侍
やっと冷静になったか。いや遅いけど。
🧑
👴
陶器師の翁
そこには年老いた尼もいて、見張りのように居りました。娘は逃げようとしますが、途中で貰った布を取りに戻ってしまう。
※人は非常時でも『せっかく貰ったし…』をやりがち。
青侍
そこで欲を出すなって! フラグ立てるなって!
🧑
👴
陶器師の翁
案の定、尼が目を覚まし、取っ組み合いに。娘は必死で逃げ出しました。
🏃♀️ 娘、知人の家へ逃げこむ
青侍
助かった…? ここから平和ルート?
🧑
👴
陶器師の翁
ところが外が急に騒がしくなりましてな。娘が覗くと、昨夜の男が縄をかけられて引かれて行く。
青侍
うわ、そこで捕まるのか。
🧑
👴
陶器師の翁
娘はそれを見て、なぜか涙が出たそうでございます。惚れたとかではない。ただ、自分の身の上が急にしみたのでしょうな。
※助かったのに、胸は全然すっきりしない。人生、後味まで面倒。
青侍
で、その娘は結局どうなった?
🧑
👴
陶器師の翁
今では不自由なく暮らしております。あの時の布を元手にして。願いは、たしかに叶ったのでございます。
青侍
いや、叶い方がだいぶクセ強いな!?
🧑
👴
陶器師の翁
だから申したでしょう。運にも善し悪しがあると。
青侍
でも最終的に生活安定したなら、俺はわりと欲しいかも。
🧑
👴
陶器師の翁
手前なら、そんな運は遠慮いたしますな。
青侍
じゃ、明日からおこもりしてくるわ。運、当たりだけ引けますように。
🧑
※この人、たぶん注意事項を読まないタイプである。
- ▶運は願えば来るとは限らない
- ▶叶うことと幸せは同じじゃない
- ▶うまい話にはだいたい裏がある
芥川竜之介『運』のあらすじ
春の午後、清水へ向かう人通りを眺めながら、青侍は陶器師の老人に「観音は本当に運を授けるのか」と尋ねる。老人は、かつて清水に願をかけたひとりの娘の話を始める。貧しい娘は、満願の夜に見た不思議な夢を信じたことから、思いがけない出来事に巻き込まれていく。やがて願い自体はかなったように見えるが、その叶い方には簡単に喜べない苦さが残る。
『運』の作者について
芥川龍之介(1892-1927)は、大正期を代表する短編小説の名手で、『羅生門』『鼻』『地獄変』などで知られる。古典や説話をもとに、人間の欲望や不安、皮肉な運命を鋭く描く作品を多く残した。『運』もまた、説話的な枠組みの中で、幸運と不幸の境目のあいまいさを浮かび上がらせる芥川らしい短編である。
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