風の又三郎
風といっしょに現れたような転校生が、山村の子どもたちの心をかき回し、ひと夏の終わりに忘れがたい気配だけを残していく。
🏫 谷あいの小さな学校、新学期スタート
🧒
一年生の子
やった、一番乗り!
🧒
一年生の子
……え、だれこの赤髪の子!?
※始業式より先に怪しい転校生が着席。田舎の学校、ざわつきレベルMAX。
🧢
嘉助
あ、わかった。あいつ風の又三郎だべ!
🌬️ 風がどっと吹く
一郎
いや、まず落ち着け。先生来るまで様子見な
🧑
👨🏫
先生
はい、新しい友だちです。高田三郎さんね
🧢
嘉助
三郎!? ほらやっぱ又三郎じゃん!
🧒🏻
三郎
お早う
※ふつうのあいさつなのに、言い方が都会すぎて全員フリーズ。
一郎
なんか変わってるけど…悪いやつではなさそうだな
🧑
🧒🏻
三郎
その運動場、何歩あるか測ってみるね
🌪️ また風が巻く
🧢
嘉助
ほら見ろ! あいつ動くと風も動く!
📚 授業スタート
👦
佐太郎
妹の鉛筆、ちょっと借りるわ
👧
かよ
それ私のだってば…
🧒🏻
三郎
じゃあ、ぼくの使っていいよ
※転校初日で唯一の鉛筆を差し出す。好感度の上げ方が強い。
一郎
……やっぱり、ただの変なやつじゃないな
🧑
⛰️ みんなで野原へ
🧒🏻
三郎
ぼくの家、あっちの上なんだ。帰り寄ってよ
🧢
嘉助
よし、今日は又三郎探検隊だな
一郎
だから又三郎って決めつけるなって
🧑
🐎 馬のいる土手の中
🧒🏻
三郎
みんなで馬追いかけて競走しようぜ
※その遊び、だいたいトラブルの入口。
一郎
ちょ、馬が外出る! それはダメなやつ!
🧑
🧢
嘉助
待って、足もう無理…でも追うしかない…
🌫️ 霧、風、雷。完全に迷子モード
🧢
嘉助
一郎ー! どこだよー! これ普通にこわいって!
※さっきまで元気だった少年、自然の本気に秒でしおれる。
🧒🏻
三郎
……こっちだ。馬、つかまえた
👨
一郎の兄
いたいた! 無茶すんな、帰るぞ
一郎
よかった…三郎、お前もびびったろ
🧑
🧒🏻
三郎
……うん
🍇 放課後、ぶどうと栗を取りに山へ
👦
耕助
ここ、おれの秘密スポットだから取りすぎるなよ
🧒🏻
三郎
じゃあぼく栗とるわ。木の上、気持ちいいな
💧 上からしずくがざばっ
👦
耕助
冷たっ! おい三郎、今わざとだろ!
🧒🏻
三郎
風が吹いたんだい
※言い逃れが完全に風属性。
👦
耕助
お前みたいな風、なくてもいい!
🧒🏻
三郎
じゃあ、風のダメなとこ言ってみて。はい続けて
👦
耕助
木を折る、屋根飛ばす、灯り消す…あと…風車も…
🧒🏻
三郎
風車はむしろ風がないと困るだろ。そこ詰め甘いぞ
一郎
ははっ、確かにそれはそう
🧑
👦
耕助
……もういい、なんか悔しいけど笑うわ
🏞️ 川遊びの日
一郎
三郎、水泳ぎ行くぞ
🧑
🧒🏻
三郎
行く。けどこの川、めちゃ冷たいな
一郎
笑うなよ、おれらの泳ぎ方には流儀があるんだ
🧑
🧒🏻
三郎
足ばしゃばしゃしすぎて、見ててちょっと面白い
※転校生、無邪気に文化の違いをえぐる。
⛈️ 鬼ごっこの最中に空が急変
🧢
嘉助
うわ、雷来た! 空の機嫌どうなってんだよ!
👥
子どもたち
雨はざっこざっこ雨三郎、風はどっこどっこ又三郎!
🧒🏻
三郎
今の、だれが言ったんだい…?
※からかい半分なのに、本人だけちょっと本気で傷つくやつ。
一郎
三郎って、強そうでたまにすごくさびしそうなんだよな
🧑
🌧️ ある朝、台風みたいな大風
一郎
この風…もしかして三郎、もう飛んでったのか
🧑
🧢
嘉助
学校、先に見に行こうぜ
🏫💨 教室は雨が吹き込み、窓がガタガタ
👨🏫
先生
高田さんは昨日、お父さんといっしょにもう出発しました
一郎
……そうか。ちゃんと別れも言えなかったな
🧑
🧢
嘉助
やっぱり又三郎だったべ。風といっしょに来て、風といっしょにいなくなったんだ
※転校は急で、別れはもっと急だ。子どもの季節は、だいたいそう。
🌬️ 窓の外で風が鳴る
- ▶不思議な出会いは一生残る
- ▶子どもの友情は風みたいに自由
- ▶正体がわからないからこそ忘れられない
宮沢賢治『風の又三郎』のあらすじ
谷あいの小さな学校に、赤い髪をした見知らぬ転校生・高田三郎がやってきます。子どもたちはその不思議な雰囲気と、風が吹くたびに重なる偶然から、彼を「風の又三郎」ではないかと半ば本気で思いはじめます。一郎や嘉助たちは、授業や野原での遊び、川遊びを通して三郎と少しずつ打ち解けますが、その交流の中では、親しさと戸惑い、からかいと憧れが入り混じります。やがて激しい風の日、三郎は突然去り、子どもたちの心には説明のつかない不思議な余韻だけが残ります。
『風の又三郎』の作者について
宮沢賢治(1896-1933)は岩手県出身の詩人・童話作家で、自然、宇宙、信仰、農村生活を独自の感性で結びつけた作品を多く残しました。『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』などで知られ、子どもの目に映る世界の不思議さと、土地の風土に根ざした言葉づかいに大きな魅力があります。『風の又三郎』は、東北の山村を舞台に、転校生へのまなざしと風の神話的な気配を重ねた代表作のひとつです。
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