悪魔
守りたいのに壊したくなる――その矛盾した衝動の奥にある、誰にも言えない寂しさを突きつける一編。
⛪ 南蛮寺。青い目の伴天連、今日も見えすぎている
うるがん
また見えた。人には見えないやつが普通にいる
🧔
※霊感が強いとかいうレベルではない。視界がだいぶ特別仕様。
👑
信長
で、今日は何が見えたんだ
うるがん
小さい悪魔です。人の顔して、コウモリの羽あって、ヤギみたいな足でした
🧔
👑
信長
見た目の情報量が多いな
うるがん
塔の上で手たたいて踊ってたり、屋根の下で日差しを避けてたりします
🧔
うるがん
坊さんの背中にくっついてたり、女房の髪にぶら下がってたりもしました
🧔
※悪魔、わりと行動が細かい。
🌆 ある夕方、寺の門前
うるがん
……あれは
🧔
うるがん
姫君の乗り物の上に、悪魔が座ってる
🧔
うるがん
しかも顔がやたら美しい
🧔
※悪魔界にも、見た目が強すぎる個体はいる。
😈
悪魔
……
うるがん
でも様子が変だな。悩みすぎて完全に考え込んでる顔だ
🧔
うるがん
これは放置できません
🧔
✝️ 十字架パワー発動
😈
悪魔
うわ、捕まった
※悩んでいたせいか逃げ遅れた。メンタル不調は判断を鈍らせる。
🕯️ 寺の奥。ろうそくが静かに揺れる
うるがん
さて、なんで姫君についた
🧔
うるがん
ちゃんと話してください
🧔
😈
悪魔
あの姫君を悪い方へ引っぱろうと思ってました
うるがん
やっぱりか
🧔
😈
悪魔
でも同時に、そんなことしたくないとも思ったんです
うるがん
……ほう
🧔
😈
悪魔
あんなに澄んだ心を見たら、汚したくないって気持ちも出るじゃないですか
😈
悪魔
むしろ、もっときれいなままでいてほしいとまで思ったんです
😈
悪魔
なのに、そう思うほど逆に壊したくなるんです
※感情が最悪の方向にねじれている。わかる人にはちょっと刺さるやつ。
😈
悪魔
守りたいのに傷つけたくなる。この矛盾の間で、ずっと迷ってました
😈
悪魔
だから乗り物の上で、ぼんやり自分の運命を考えてたんです
😈
悪魔
もし迷ってなければ、あなたが来る前にとっくに消えてました
うるがん
悪魔なのに、ずいぶん人間くさい悩み方をするんですね
🧔
😈
悪魔
私たちはいつもそうなんです。堕としたくないものほど、堕としたくなる
😈
悪魔
明るいものを見た記憶と、今いる暗さが、胸の中で一緒になるんです
😈
悪魔
どうか憐れんでください。私はただ、寂しいんです
💧 悪魔が涙をこぼす
※ここで泣くの、反則である。読む側の感情が急に忙しい。
うるがん
……お前だけの悲しさではないのかもしれません
🧔
※人はきれいなものを守りたい。でも近づきすぎて壊しそうにもなる。ややこしい。かなりややこしい。
- ▶愛と破壊衝動は隣り合う
- ▶悪魔の悲しみは人間にもある
- ▶清らかさほど人を揺らす
芥川竜之介『悪魔』のあらすじ
人には見えない悪魔の姿まで見える伴天連うるがんは、ある夕方、姫君の乗り物の上に座る一匹の悪魔を見つける。十字架の力で捕らえられた悪魔は、姫君を悪へ引きこもうとしながら、同時にその清らかさを守りたいとも願っていたと告白する。汚したくないものほど汚したくなるという矛盾に、悪魔自身も深く苦しんでいた。うるがんと読者の前に浮かび上がるのは、悪魔だけに限らない、人の心にも潜む複雑な悲しみである。
『悪魔』の作者について
芥川龍之介(1892-1927)は、大正期を代表する小説家で、『羅生門』『鼻』『地獄変』などで知られる。古典や説話、キリスト教的な題材を取り込みながら、人間の内面の矛盾や不安を鋭く描いた。『悪魔』もその特色がよく表れた短編で、宗教的な外観の奥に、人間心理のねじれた真実がひそんでいる。
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