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高瀬舟縁起

森鴎外

たった二百文の喜びと、苦しむ身内を終わらせた罪――人は何を財産と呼び、どこまで他人を裁けるのかを突きつける一篇。
🚣 京都・高瀬川。罪人を乗せた舟がゆっくり下る
※この時代の護送、だいたい空気が重い
同心
今日はどんな事情の人だ…と思ったら、やけに落ち着いてるな
🧑‍✈️
👤
罪人
はい。なんか今、ちょっと嬉しいです
同心
え、遠くへ送られる途中で?そのテンションある?
🧑‍✈️
👤
罪人
だって銭を二百文もらったんです。こんなに自分の金を持つの、初めてで
※人生初のまとまった所持金が護送中。世の中、皮肉がうますぎる
同心
二百文でそんなに喜べるのか…
🧑‍✈️
👤
罪人
自分には十分すぎます。使わず持ってるだけで、なんか安心するんで
同心
で、罪は…弟を手にかけたって聞いた
🧑‍✈️
👤
罪人
はい。弟と二人で働いてました。でも暮らしが本当にきつくて
👤
罪人
弟が自分で命を絶とうとして、でも死にきれなかったんです
🌙 舟の上の空気が急に重くなる
同心
……それで?
🧑‍✈️
👤
罪人
弟が、もう助からないから終わらせてくれって頼んだんです
👤
罪人
だから、自分がやりました
※一言で裁けそうで、全然裁ききれない話がいちばん重い
同心
それは…ただの悪意って話じゃない気がするな
🧑‍✈️
👤
罪人
自分でも、何が正しかったのかはわかりません
同心
苦しんでる人を楽にしてやりたいって気持ちと、人を死なせちゃいけないって決まりと…
🧑‍✈️
同心
その間で、人はどうすればいいんだろうな
🧑‍✈️
🌊 舟は黙って川を下っていく
※川は流れる。答えは流れてこない
👤
罪人
でも、この二百文は…自分には大事なんです
同心
金の重さって、額だけじゃ決まらないんだな
🧑‍✈️
同心
罪の重さも、帳面みたいにきっちりは量れないのかもしれない
🧑‍✈️
  • 貧しさは価値の感じ方を変える
  • 善悪は簡単に線引きできない
  • 人を裁く前に事情を考える

森鴎外『高瀬舟縁起』のあらすじ

京都の高瀬川を下る罪人護送の舟で、同心はひとりの男と向き合う。男は弟を手にかけた罪で遠くへ送られる身でありながら、役所から渡された二百文を持てたことを素直に喜んでいた。事情を尋ねると、貧しさの中で弟が自ら命を絶とうとして果たせず、苦しみながら自分に終わらせてくれと頼んだのだという。その告白を聞いた同心は、金の価値や人の命、善悪の境目について深く考え込む。

高瀬舟縁起』の作者について

森鴎外(1862-1922)は明治から大正にかけて活躍した小説家・評論家・軍医で、『舞姫』『山椒大夫』『高瀬舟』などで知られる。西洋の思想や医学に通じ、近代日本における個人・倫理・制度の衝突を鋭く描いた。『高瀬舟縁起』は、『翁草』に見える逸話をもとに『高瀬舟』を書いた背景と、その中心にある「財産観」と「苦痛からの解放」という倫理的問題を語った文章である。

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