オモチャ箱
夢のような作品世界に生きようとした作家が、現実とのずれに追い詰められていく痛々しさが胸に刺さる。
📦 作家の人生、だいたい散らかったオモチャ箱説
※安吾、いきなり「芸術家って変人扱いされがちだけど、そう単純じゃない」と語り始める
安吾
作家ってさ、規則正しく生きられないから変に見えるだけで、本質が変って話でもないんだよな
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安吾
むしろ作品つくる時は、予定どおりにいかないのが普通
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安吾
本当に生きた作品って、最初のプランをはみ出したところから始まるし
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※ここで話題は、ひとりのややこしい作家へ
安吾
で、三枝庄吉って作家がいたんだけど
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安吾
この人、小説以外ほんとに不器用。でも人間を見る目はめちゃくちゃ鋭かった
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🍶
庄吉
金ないけど今日は俺が払う!!
※なお財布はほぼ空。見栄だけは元気
🍶
庄吉
え、足りない…? いやどっかに入ってるはず…
安吾
こういうタイプ、金の重みは誰より知ってるのに、入ると秒で飛ばす
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🏠 引っ越し回数、多すぎ問題
🍶
庄吉
あの店の人っぽい服が見える…逃げよう
※借りたお金の気配に異常に敏感
安吾
庄吉の小説って、だいたい自分と奥さんがモデルなんだよ
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👘
庄吉の妻
また私が作品に出てるんだけど
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庄吉
現実はしんどいけど、小説の中ではちょっと風通しよくしたいじゃん
安吾
最初はそれでよかった。夢っぽいのに、ちゃんと現実に根があったから
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安吾
でもだんだん、その夢が現実から浮き始める
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※オモチャ箱は楽しい。でも中身が現実離れしすぎると、急にグラつく
🍺 庄吉、酒でしか人と話せない期
🍶
庄吉
しらふだと人と話せん…とりあえず酒…
👘
庄吉の妻
朝でも夜でも酒屋に走るこっちの身にもなって
安吾
しかも庄吉、見た目より全然酒に強くない
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🍶
庄吉
飲んだのに吐いた…でもまた飲む…
※かなり非効率な飲み方
💕 庄吉の恋愛、だいたい空回り
🍶
庄吉
今日こそモテる気がする
安吾
なお本人だけがそう思ってるパターンが多い
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👘
庄吉の妻
酔うたびにどっかの女性のところ行くのやめてくれる?
🍶
庄吉
いやこれは人生修行というか芸術の迷路というか…
※言い訳だけは文芸評論みたいに長い
安吾
でも本質は、女どうこうより創作に行き詰まってたんだと思う
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安吾
自信をなくすと、人はやりたくもないことにフラフラ引っ張られる
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🏢 アパートで事件の気配
💄
アパートのマダム
先生〜ちょっと飲みましょ
🍶
庄吉
行きます!!
👘
庄吉の妻
原稿は? 家のお金は?
※呼ばれた方向に秒で行くのに、締切には行けない
安吾
しかも庄吉、実はその場でうまく扱われてるだけっていうね
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💄
アパートのマダム
先生、ちょっと待っててね
🍶
庄吉
うん、待つ
※待たされてる意味は分かってる。でも笑うしかない
👘
庄吉の妻
もう無理
🚃 小田原へ移動。人生の立て直し編…のはず
🍶
庄吉
ここから新規まき直しだ。静かな場所で傑作を書く
安吾
作家って『静かな部屋さえあれば書ける』って言いがちだけど、だいたい迷信なんだよな
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👘
庄吉の妻
その前に家賃どうするの
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庄吉
書ければ全部なんとかなる予定
※予定、いつも強い。現実、もっと強い
安吾
しかも大きな連載の話まで来た。普通なら希望のターン
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🍶
庄吉
きた…! これで一発逆転…!
安吾
でも期待が大きいほど、書けない時の焦りも大きい
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📝 原稿用紙を前に固まる庄吉
🍶
庄吉
書けん…
👘
庄吉の妻
お米代もないのに飲んで帰ってくるの、ほんとやめて
🍶
庄吉
……
💔 家庭のひび、決定的に
👘
庄吉の妻
もう耐えられない
安吾
妻はついに家を出る。しかも今度は、若い弟子と一緒に
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🍶
庄吉
え
※ここで庄吉のメンタル、急降下
🍶
庄吉
いや待って…それは聞いてない…
安吾
やせ細って、友人の顔だけを求めるようになる
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📮
栗栖按吉
とにかく落ち着け。見た目ほど単純じゃないかもしれん
🍶
庄吉
うん…うん…
※慰めの言葉、いる時は効く。帰ったあと急に切れる
🌫️ 数日後
安吾
庄吉は、とうとう自分を追い込んでしまう
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※ここは重いので細部は省略。残ったのは、取り返しのつかなさだけ
安吾
庄吉は夢をつくる人だった
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安吾
でも夢って、現実に根を下ろしてないと、ただの壊れやすい飾りになる
🖋️
安吾
作品も人生も、オモチャ箱みたいに自分で並べ替えられると思ってたのかもしれない
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安吾
けど現実は、そんなに優しく片付いてくれない
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※箱をひっくり返したあと、床に散らばるのは比喩じゃ済まない
- ▶芸術は現実から逃げるほど弱くなる
- ▶自分に酔うと足元が見えなくなる
- ▶夢には現実の根っこがいる
あらすじ
語り手はまず、芸術家や作家が世間で思われるほど単純な変わり者ではないと語り、そのうえで作家・三枝庄吉の人生を振り返る。庄吉は鋭い観察眼を持ちながら、貧しさや酒、見栄、家庭の不和の中で、自分と妻をモデルにした夢のような作品世界へ傾いていく。ところがその作品は次第に現実から離れ、妻もまた小説の中の自分と現実の自分のずれに耐えられなくなる。創作の行き詰まりと生活の破綻が重なった末に、庄吉は取り返しのつかないところまで追い込まれてしまう。
作者について
坂口安吾(1906-1955)は、戦後文学を代表する作家・評論家で、『堕落論』『白痴』などで知られる。既成の道徳や美意識を疑い、人間の本性や現実を直視する姿勢を貫いた。『オモチャ箱』でも、ひとりの作家の破綻を通して、芸術が現実から切り離されたときの危うさを鋭く見つめている。